結城紬・研修レポート ~後編~【群馬県前橋市|小川屋写真館

スタッフトーク

こんにちは!前橋市中央通りにありますスタジオ桑町 小川屋写真館の前野です。19日から始まりました『キモノたのしみ展』。この催事のコンセプトは「お客様にきものを楽しんでいただく」、というものですが、見ていると社員もめちゃくちゃ楽しんでおります。(笑)
和小物さくら様をはじめ、色無地や浴衣など、これからの季節にピッタリなアイテムが沢山あり、「あ、これカワイイ!この間買った帯に合いそう!」「昨年仕立てた浴衣に合う下駄はないかしら…」なんて、皆ついつい商品を見ることに夢中になっています。(笑)
普段沢山の商品を見ている小川屋社員も思わずテンションが上がってしまう今回の催事、絶対にお客様にも楽しんで頂けると思います! 是非遊びにいらしてくださいね。

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4/21(金)〜25(火)和を楽しむ「キモノたのしみ展」開催します!

結城紬の歴史

さて、前半は結城紬の製造過程において重要なポイントを見学してきました。後半は、株式会社奥順様へお邪魔して、結城紬の歴史を学びます!

ちなみに、奥順様の店舗入り口はこんな感じで昔の建物そのままでして、とっても趣があります!(国の登録有形文化財だそうです)

また、奥に進むと、結城紬ミュージアム『つむぎの館』となっています。
売店や織場などがありまして、染色や織のワークショップなども行っているそうです。
その中の一角、本場結城紬染織資料館、『手緒里』にて、館長の奥澤様よりレクチャーを受けました。

結城紬、2000年の歴史!

結城紬の産地は鬼怒川の周辺ですが、江戸時代、この鬼怒川という地名は『衣川』という漢字でした。また、結城には絹川小学校があることからも、古くから養蚕の盛んな地域だったことがうかがえますね。
結城紬の原型とされているのが、『長幡部絁(ながはたべあしぎぬ)』という絹織物で、約2000年前のものです。その織物の製法を変えずに現代でも同じ方法で作られているのが、本場結城紬なのです。
ちなみに、2004年の調査で、結城市と同じく結城紬の産地である、栃木県下野市の甲塚古墳で埴輪が出土しました。その埴輪というのが、機織をしている女性の埴輪でした。
2体出土したうちの一体は、地機の埴輪で、現在使われている地機とほとんど変わらない形だったそうです。2000年間も、製法が変わらず現代に引き継がれてきた、というのはとても驚きですよね!
埴輪の女性が着ている衣服もとってもオシャレなんです!(ご興味があればぜひ画像を検索してみてくださいね。)

元々は男性の着物だった!?

『和漢三才図会』という、江戸時代の百科事典のような書物に、結城紬は最上品として記されているそうですが、明治初期までは男物として着用されていました。今のように酵素を使って糊を落とす、という技術は無かった時代。
紬は非常に丈夫なことで有名ですが、一方で糊が付いたままの素材感は硬くてしっかりしているので、武骨な印象を持ちます。資料館では昔の着物も展示されていましたが、古いものでもいまだにがっしりとした質感が見て取れます。ですので、男物として着用されていた、と聞いて納得です。
明治以降、西洋化が進み男性が洋服を着るようになると、結城紬は女性物のしゃれ着として進化をしていきます。この時期に、前回ご紹介した亀甲絣も登場するようになりました。男物では藍染などの無地のようなシンプルなデザインでしたが、女物は柄や色合いも華やかになっています。

平織と縮織

明治後半には平織りではなく、撚りをかけた糸を使って織る、『縮織(ちぢみおり)』が登場しました。軽くてさらりとした肌触りが特徴の縮織は、人気を博し、総生産の80%が縮織になったほど。
ところが、昭和31年、歴史が長いことから『平織』が重要無形文化財に指定されたことにより、またもや生産が逆転。段々と縮織は衰退していき、今では『幻の結城縮』となってしまいました。

幻の結城縮

今回の催事では、そんな幻と言われる結城縮も登場しています。見学に行った須藤織物様は、独自の撚糸機を作り、手つむぎ糸を撚糸にしています。撚糸が作れるのは、産地全体で3件のみという非常に貴重な技術なのです…!!
縮織は通常の平織よりもさらにハードルが高いそうです。まず手紡ぎ糸は撚りをかけるのが難しい。太さが均一ではないため、撚りをかけると細い部分の撚りが集中してしまい、切れてしまいます。
そのため、須藤織物様では、水に濡らしながら撚る、八丁撚糸機を使っています。撚糸を緯糸につかって織る際には、くるくるとねじれた糸を伸ばしながら織り込む必要があり、より高い技術が必要なのだそうです。

結城紬の特徴

紬の着物はとにかく丈夫であることは良く言われます。「親子三代にわたって着られる」というお話も有名ですが、結城紬の丈夫さや魅力などの特徴についてもご紹介します。

着れば着るほど味が出る…それが結城紬

その昔、新しく仕立てた紬の着物を、

「まずは女中さんにしばらく着てもらい、その後女将さんが袖を通す。」

「最初は寝間着にして、その後外出着にする。」

なんてこともしていたそうですが、現代ではちょっと考えられないことですよね。(笑)

実は、結城紬は着ていくごとに風合いが良くなっていく、という特徴があります。前回、製造過程の最後に『湯通し』をご紹介しましたが、そこに秘密が隠されています。

結城紬は手つむぎの糸を使います。手つむぎ糸は通常の糸より柔らかいため、織りにくいのです。そこで、この糸に小麦粉の糊を付けることで扱いやすくしています。湯通しでは、この糊を落とす作業となりますが、完全に糊を落としきれるわけではありません。
仕立てあがった着物を着ていく中で、洗い張りなども行いながら段々と残りの糊が落ちます。糊が落ちてくると、真綿のふんわりとした柔らかい質感が蘇り、着心地や肌触りが良くなっていきます。
また、糊が取れると1本1本の繊維が元に戻ろうとするそうで、糸目が整いぎゅっと詰まります。このぎゅっとつまった繊維構造が、結城紬の丈夫さにもつながります。

説明の中で、館長様がお祖父様から譲り受けたという70年以上前の着物を見せてくださいました。
触り心地は生糸の着物と同じような、滑らかな質感に大きく変化していましたし、それだけ長く着用していても生地が全く傷んだりしておらず、とても綺麗な状態だったので、大変驚きました。
質感が変化するのは、表面にある毛羽が使い込むごとに取れていき、しなやかでつるり、とした絹本来の質感へと変化するためだそうです。 毛羽と共に、手つむぎ糸独特の節も良い感じに馴染み、肌触りがとても良くなります。

着姿の美しさを生み出す秘密

結城紬はすべて手つむぎ糸を使うため、他の着物と違う特徴があります。それが、経糸と緯糸の『糸の太さ』。一般的な着物は、経緯両方とも同じ太さの糸ですが、他産地の紬は経糸を細く平らで丈夫な糸を使い、緯糸は早く織り上げられるように節のある太い糸を使っています。
一方、結城紬はそれとは逆に、経糸は太く緯糸は細いそうです。これが、結城紬の着姿の美しさにつながる秘密なのだとか。
一反の横幅はもちろん決められたサイズでどの産地の紬も変わりはありませんが、ボーダーとストライプで見え方が違うように、「膨張して見えやすい」ということがあるのかもしれませんね。

結城紬の課題

さて、お話を沢山伺い、結城紬にすっかり興味深々な私。だからこそ結城紬の未来がお節介ながら、心配になってしまいました。
『効率化』や『コスパ』なんて言われて久しい現代において、そうした世界とは対極にあると感じる結城紬の製造過程。
膨大な時間と労力がかかるこの製造過程を担うのは、AIでも、機械でもなく、『人』なのです。どの産業でも一様に言われている、人材不足はもちろん結城紬でも問題となっています。

結城紬で一番の課題は『糸つむぎ』だそうで、現在では糸つむぎの研修や講習会を行い、人材育成に努めているそうです。(ちなみに奥順様のHPで初心者向けのオンライン講座も開講しているようです。前野も受けてみたいな…と密かに思っております。笑)

とはいえ、人を増やせばよい、という単純なお話でもありません。本場結城紬の認定を受けるには、やはり高い技術が必要になりますし、その技術を得るには時間がかかるものです。
また、生産できる反物の数も減少している上に、そもそも着物の需要自体が減ってしまっていれば、人を増やしても職人さんたちは生活ができなくなってしまいます。
例えば、着物一反の価格と、それにかかわる職人さんのお給料を時給換算して比べてみたら…? 

着物について全然知らなかった、入社当時。紬は基本的にしゃれ着だというのに、高価なことに大変驚いたものです。「普段着は、ユニクロやしまむらで十分」と考える30代なら、当然の反応ではありますが。
ですが、こうした製造過程を考えれば、その価格は納得です。「ていうか、安すぎませんか!? 🙄 」とさえ今なら思います。

機械化や大量生産、といった方法で新しい活路を見出してきた産地が多い中、結城紬はユネスコ無形文化遺産に登録され、2000年という長い間受け継がれた技術を残しつつ、産業として経済を回していかねばならないのです。それってとっても難しい問題ですよね。

とはいえ、結城紬は究極のSDGsなのではないか、とも感じています。

親子3代着られる衣服って単純に凄くないですか? しかも、大切に着たらどんどん味わいが出て、良い感じに育つらしいです

自分だけの結城紬を育てませんか?

冗談はともかく(半分は本気ですが)、環境や文化への感心が高まっている今、結城紬をより多くの方に知っていただく絶好の機会なのではないかと今回の研修を通して感じました。
ぱっと目を惹く華やかさはありませんが、味わい深い結城紬、是非沢山の方に見て、触れて、背景を知っていただきたいです。

これからの季節にぴったりな夏結城や、希少な結城縮をはじめ、研修で社員が選品した反物もあります! ぜひ、店頭にて写真館メンバーが選んだ反物を見つけてみてくださいね!

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