こんにちは!前橋市中央通りにありますスタジオ桑町 小川屋写真館の前野です。
今日からスタートした『キモノたのしみ展』。『和小物さくら』様の草履・バッグのオーダー会はやはりカラーが美しく、目を惹きますね!
昨年の催事で購入した中村も、最近着用した感想をnoteでアップしていました。
ちなみに、今回レポートする京都研修でもさくら様の草履を履いていました。2日間、車移動が基本ではありますが、なんだかんだで1万歩近くは歩いていました。
ですが、最中に歩きづらい&痛そうな様子は全くありませんでした。本人にも感想を伺ったところ、「まだ履くのは2回目だけど、鼻緒や足裏も痛くなく、全然大丈夫でした!」と笑顔で答えてくれました。やはり機能性抜群な超優秀草履ですね! ちなみに私は新しいパンプスで靴擦れを起こして、絆創膏だらけでしたよ。(笑)
さて、今回はそんな京都研修についてのレポートです! 研修では、5月以降の催事や振袖に関連するメーカーさんを中心に見学してきました!
京都研修1日目
① 引染体験
研修のスタートは、引染工房へ。こちらの工房は、岩井半四郎ブランドのきものを専属で担当されています。普段一般人が足を踏み入れることができない場所ということで、社員も皆緊張の面持ちで入室。
工房内は想像以上に広々としていて、天井にはこれから染色を行う白生地がかかっています。
そもそも引染めとは、着物の地色を染める工程のことを言います。反物を一気に染めるのに、反物を両端から引っ張って、しっかりと張っておき、刷毛で色を入れていきます。職人さんが最初にデモンストレーションを行ってくださいましたが、お話しながら凄いスピードで刷毛を動かしていきます。引染のポイントは、均一にムラなく染めること…ですが、刷毛に含まれる染色液の量、刷毛の動かし方やスピードなど、全てがバランスよく行えないと美しく染めることはできません。職人さんはとっても簡単に行っていましたが、いざチャレンジしてみると、その難しさを実感しました。
地色を入れた後、青・紫・黄色の3色を好きな模様に入れて、ボカシ染めも体験させていただきました! 各々が自由に描いた作品は、なんと5月の催事で展示されます。(照)
こちらの工房では、色を分析し、すべてデータとして記録・保存しています。そうすることで、同じ色を再現できるようにしているそうです。とはいえ、季節や温度・湿度などにより多少変化してしまうそうなので、そこは職人さんの長年の経験がモノを言う、部分でもあります。デジタルとアナログを上手に織り交ぜているのですね!
② 写真館新衣装の選定
皆が帯屋さんへ見学に行っている間に、私と中村の写真館チームは別行動で衣装屋さんへ。七五三の撮影時に無料レンタルを行っているドレスやタキシードも、流行を取り入れて新しいデザインのものを追加することになりました♪
選んだ衣装は最近流行りのニュアンスカラーの大人っぽいドレスを中心にチョイス。レースや飾りなど細部にもこだわり、素材もお子様に優しい柔らかな着心地のものを選びました!! ウェディングドレス顔負けのクオリティの高い衣装なので、これから七五三を予定しているお客様は、ぜひお楽しみに!! また衣装が届き次第、こちらのブログでもご紹介いたします。
③ 白生地問屋
衣裳選定を終えて再び合流し、1日目最後の研修場所は白生地問屋の『株式会社 大塚』様へ。京都らしい外観、「THE 京町家」とも言うべき社屋、通されたお部屋は美しいお庭が見えます。夕暮れ時の風景の変化を刻一刻と見ることができ、ドキドキしてしまいました! こんな素敵な場所で働けるってうらやましい!(心の声)
そんな大塚様では、主に白生地の変遷についてレクチャーを受けました!
教えて頂いたのは、『ちりめん』について。織物は、経糸(たていと)と緯糸(ぬきいと)を一定の規則によって交錯して作ります。細かな説明は省略しますが、ちりめんの場合この緯糸を撚糸(ねんし)といって1mあたり3000~4000回の強い撚(よ)りをかけた糸を使います。この撚りが、ちりめん独特のポコポコとした質感(凹凸のことをシボと言います)を生み出します。 とはいえ、織り上がった生機(きばた)はシボの凹凸はなく、平らな状態です。
この生機を精練という、弱アルカリ性の溶液の入った釜で炊き、水洗いを4回繰り返すことで表面に残ったセシリンという成分を除去し、乾燥させるとちりめんらしくなります。ただし、この状態だと縮み過ぎてしまうので、規定のサイズまで伸ばします。そんなちりめん、染色がしやすく、着てもシワになりにくい、そして艶のある光沢が魅力なのですが、デメリットは『縮む』こと。お客様も、やはりそんな縮みを気にして、時にはクレームになってしまうこともあったのだとか。その縮みを軽減するために、緯糸の撚糸の数や、パターンを工夫することでより良いちりめんの開発をしてきたそうです。代表的なものが、『一越(ひとこし)ちりめん』。緯糸に右撚り・左撚りの糸をそれぞれ1本ずつ交互に織り込むことで、縮みを抑えています。
また、ちりめんの他にも、ジャガード織の変遷なども教えていただきました。時代の流れや流行、お客様のニーズに柔軟に対応しながら、新しい白生地をどんどん開発されています! 振袖用として作られた新たな白生地は、非常に愛らしい地紋があり、社員全員から「可愛い!」と評判でした。鮮やかな色合いに染められ、仕立てられた状態もぜひ見てみたいです。
角度によって模様が変わります。まるでトリックアートのような不思議な柄です。
京都研修2日目
④ 京友禅見学
2日目のスタートは、木村染匠 様で京友禅の見学でした。ちなみに染匠というのは、京友禅の非常にたくさんある作業工程を統括しているプロデューサーのような役割を果たしています。きものの企画をし、それぞれの作業をどの職人さんにお任せするかを決めます。
手描きされた柄のイメージ
振袖においての京友禅の工程などについて説明を受けた後、実際に職人さんの作業を見学させていただきました。
こちらは糊糸目(のりいとめ)の様子。ゴム糊で下絵の線をなぞっていきます。この糊糸目を行うのはセンスが必要とのことで、絵心が無いとダメなのだとか…。非常に細かな作業なので、見学している私たちも思わず息をするのを忘れてしまいます。
こちらは挿友禅の様子。京手描友禅の中でも花形ですね!お話しながらサラサラと描いていましたが、こちらも筆や刷毛の使い方がポイントとのことです。ゆりかごのような形の枠に、白生地を張って色を挿します。台の下にはヒーターがおいてあり、すぐに乾かすことができるようになっています! 塗っては乾かし、を繰り返しながら色を重ねていくことで、深みと立体感のある模様を仕上げていきます。
⑤ 振袖選定
ひととおりのきものについて学んだあとは、実際に振袖を選定しました!沢山の振袖の中から、小川屋で扱う振袖を社員全員で選びます。2日間で学んだことを反芻しながら振袖を見てみると、やはり見方が変わってきます。今まで、ぱっと見の美しさや華やかさばかりに目が行っていましたが、知識が増えると、染めや友禅、刺繍、地紋に至るまで、より深く着物を見ることができるようになります。
⑥ 藍染体験
最後は、雅織工房さんにて、先に7月に予定している催事についての研修を受けました。
友禅には、先に見学した手描きの他に、型を使う『型染め』という技法もあります。型染めは、長い板の上に白生地を糊で貼り、その上に型紙を置いて彩色していきます。この板の上で染色を行うことから、板場友禅とも呼ばれます。この型紙は、色によって型紙を変えるので、沢山の色を使う場合はこの型紙を何十枚、何百枚と使用するそうです。これはもう気が遠くなりそうな作業ですね…。柄がずれないように合わせるのも、素人には絶対にできない大変な作業ですので、最も職人さんの技術力が必要とされる染色法とも言えます。
型友禅の説明の後、次は藍染について学びました。藍染の原料である藍についてや、染色の過程などを映像を見ながらお話を聞きました。レクチャー中に社員全員に白のハンカチが配られ、好きな模様を作るために、輪ゴムなどで絞ったり、畳んでみたりしていました。そして、いざ染色!
みんなで藍染の液がたっぷり入った浴槽に、ハンカチを浸けていきます。2分ほど浸けて上げるという作業を3~4回した後、水洗いします。
ちなみにこちらが、藍の葉を乾燥・発行させた蒅(すくも)です。この蒅に、麩(ふすま)、石灰、灰汁(あく)、日本酒を加えてさらに発酵させたもので、染色を行います。
染色というと、化学的な薬品を使うのかと思いきや、全て天然の素材なのですね! 実際に、体内に入れても問題ないそうで、「良かったら液を舐めてみますか?」と言われ、味見してみましたが特に味はありませんでした。発酵のせいか、工房内は酸性の薬品のような匂いがしていたのですが、液自体は無味無臭だったことに驚きました。
藍染の職人さんたちは、手がしっかりと藍色に染まっています。確かに、いちいち手袋をするのは大変ですよね。紺色のマニキュアを付けたような指先を眺めながら、改めて着物に携わる職人さんの、並々ならぬこだわりや丁寧さ、気の遠くなるような作業をコツコツとこなしていく根気強さを感じ、尊敬と感謝の気持ちでいっぱいになりました。
いかがでしたか? 私たちが日ごろ見ている反物ひとつひとつに、本当にたくさんの人の手がかけられています。今回の研修では、そうした裏側を見ることができただけではなく、職人さんがどんな想いできものづくりに取り組んでいるのか、どんなことを着る人に伝えたいのか、ということも直接伺える素晴らしい機会となりました。今後、それぞれのきものが持つストーリーや魅力をより深くお客様にお伝えできるのではないかと思います!
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